家計調査からみる私たちの生活

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 私たちは日々働き、生活しているわけですが、果たして豊かになっているのでしょうか?日々生活をしていると、「依然と比べて豊かになった」とか、「以前より生活が苦しくなった」とか、なかなか実感できないと思います。今回はこの点について、総務省統計局が発表している「家計調査」のデータから考えてみることにしました。家計調査とは総務省が実施している調査の一つで、一定の統計上の抽出方法に基づき選定された全国約9千世帯の方々を対象として,家計の収入・支出,貯蓄・負債などを毎月集計している調査のことです。今回分析したのは私が属している「二人以上世帯のうち勤労者世帯」です。調査した世帯の構成や、年収、どのようなものに支出したか、などがわかります。

世帯構成

 まずは「二人以上世帯のうち勤労者世帯」の世帯構成です。

 グラフの始まる2000年から世帯人数は緩やかに下落傾向です。私が今回ピックアップしている世代の関係から少子化の影響でしょうね。一方で有業人員の方は緩やかに上昇しており、こちらは共働きがより進んでいることを示していると思います。この辺りは普段からニュースで聞かれるトレンドがきちんと反映されていますね。

 次に持家比率と世帯主の年齢の推移です。

 持家比率と世帯主年齢、ともに伸びています。この辺りは年齢を重ねるについて、持家が増える傾向にあるでしょうから当然の結果でしょうか。ただリーマンショック後などは一時期持家比率が低下していますね。ローンの返済等が難しくなり、手放す人が増えたのかもしれません。

所得の推移

 次に世帯ごとの所得の推移です。グラフには税金などが控除される前の実収入(額面の給与)と税金などが控除された後の可処分所得 (手取り) を記載しています。

 2000年以降、実収入、可処分所得の減少が続いていましたが、2017年付近からトレンドが変わったように見え、上昇傾向にあります。2020年はコロナの影響でまた下がるのでしょうが。実収入は2000年より上がっています。しかし、可処分所得を見てみるとようやく 2000年と同じくらいの水準に戻っているにすぎません。こちらの詳細は口述しますが、税金、社会保険料が増えているのが原因です。

支出の推移

 次に支出の推移について掲載しました。支出には私たちがコントロールできる消費支出(食費、交通費、住居費など)とコントロールできない非消費支出(所得税や住民税などの直接税、社会保険料など)があります。それぞれの推移を 2000年から2019年まで見てみました。

 消費支出はやや下落傾向にあるのに対し、非消費支出は上昇傾向にあります。しかし、消費支出は世帯の構成人数がその分食費がかさむなどで増えますので、世帯単位ではなく一人当たりで見た方がよいように思います。非消費支出は自営業者の国民保険なら世帯の構成人数によりますが、会社員の健康保険は世帯の構成人数に依存しないので、非消費支出は引き続き世帯としてみることとします。

 非消費支出は2010年以降、一貫して上昇傾向です。一方、一人当たりの消費支出は 2016 年までは下落傾向でしたが、ここ数年は上昇してきています。ただそれでもようやく 2000 年の水準程度に戻っただけです。さて、さらにここでインフレ、デフレについて考慮してみることにします。

 2000 年以降、長らくデフレが続いていましたが、2014年から上昇傾向です。ただ 2014 年の消費者物価指数の上昇は消費税が 5% から 8% に引き上げられたことによる影響が大きいです。その後は少しずつ上昇傾向で、2019年にはここ20年では最も高い 101.8 を付けました。つまり2000 年と比較すると若干インフレが進んでいることとなります。

消費支出の内訳

 まずは消費支出についてです。世帯当たりの各費目に対する支出は下表のとおりとなっています。

 世帯単位の支出からは、エンゲル係数が増えていることからも「食費」の割合が増えているのがわかります。また伸びの特に大きいものとしては「保険医療」、「交通・通信費」が挙げられます。一方、大きく減少した費目としては「被服及び履物」と「その他の消費支出」が挙げられます。上の表は世帯当たりの支出となりますが、これを一人当たりの支出としてみるとどうなるでしょう?

 傾向は変わらないですが、よりわかりやすいかなと思います。でも住居費とかは世帯で見た方がよいと思いますので、そのあたりは気を付けてみてください。次は以前より支出が増えており、支出額も多い「食費」、「交通・通信費」の内訳と以前より支出が大きく減っている「その他の消費支出」の内訳をみていきたいと思います。

食費

 家計調査ではかなり細かく支出の内訳をみています。食費の内訳については以下の通りです。なお、数字は一人当たりの支出で計算しています。

 2019年と2000年を比較して目立つのは魚介類への支出の大きな減少ですね。そして代わりに肉類の支出が増えています。食生活の欧米化が叫ばれていますが、その傾向がこの数字からも見て取れそうです。あと最近、魚介類が高いですよね。それも影響しているかもしれません。今年のサンマとか、本当に高くて手が出ませんでした。10年前はもっと安かったのですが。あと減少しているのは果物ですね。でも2010年からは増えています。適度な果物は健康にもいいですし、あまり減らしすぎないようにしたいものです。
 増えているものに目を移すと、肉類については既にふれました。あとは菓子類、調理食品、飲料、一般外食の増加が特に目立ちます。やはり共働き世代が増えて、家事に手をかける時間が減っているのが一因かもしれません。あと菓子類はステルス値上げ(値段は据え置きで内容量が減少)の影響もあるかもしれません。食費の中身を見ると、食費の値上がりは我々の生活スタイルの変化が大きいように見えます。

交通・通信費

 次に交通通信費についてみてみます。交通・通信費は食費、その他の消費支出の次に大きい消費項目なので気になるところです。なお交通、通信費は世帯ごとで見ることにしました。自動車や電話の保有台数は世帯ごとに違いますので、一人当たりで見るより世帯当たりで見た方が実情に合っているかなと思いましたので。

 交通・通信費は2000年から増加傾向ですね。その内訳で目を引くのは通信費の支出増ですね。ただ2000年と比べると携帯電話を持つ人の割合が増えたのでこの点はしょうがないかなと思います。2010年と比べたらどうなのでしょう。総務省がモバイル端末の個人の保有状況を調べていました。出典は総務省「通信利用動向調査」です。

 2014年から2017年のデータですが、モバイル端末の保有率は上がっていますね。ですので2010年から2019年にかけてもモバイル端末を持つ人が増えたのが、通信費が上がっている一つの要因でしょう。あとは通信料が増えているのもそうなのでしょう。ただその分便利なサービスを享受していますので、仕方がない面もあるかと。あとは自動車関連の費用が上がっていますね。こちらも我々の家計を圧迫している要因のように見えます。若者の自動車離れが進んでいるにも関わらず、こちらの費用が増えている要因は何なのでしょう?ちょっとこの辺りは自動車を保有していないこともあり、よくわからないですね。

その他の消費支出

 さて次はその他の消費支出です。ここには理美容、たばこ、こづかい、交際費などが含まれます。そちらを2000年、2010年、2019年と比較してみました。なおこちらは一人当たりの支出で出しています。

 自分の身の回りに使用するのが諸雑費ですが、こちらは増加傾向です。理美容は増えていますね。一方、こづかいは減っています(泣)。自由に使えるお金は減っているようです。そして交際費に分類される項目も軒並み減少。皆様、こづかい、交際費を削って他の費用に充填しているようです。

貯蓄・投資

 さて収入があり、その中から支出があり、そこで余ったお金は貯蓄や投資へ向かうこととなります。最後にそこの動向を見ていきたいと思います。その前に可処分所得と消費支出の動向について振り返ってみたいと思います。2000年から2019年までの可処分所得、消費支出の動向が以下です。数字は世帯ごとです。

 2000年以降、可処分所得、消費支出は減少していました。しかし最近は可処分所得の伸びる一方で消費支出はあまり変わっていないですね。つまり貯蓄や投資に回るお金は増えている、ということになります。以下で確認してみましょう。

 2000年以降やや下落傾向で、金融資産の純増が2000年と同水準になったのはようやく2016年となってからです。この間長らく世帯での貯蓄額は7~9万円の間でしたが、2018年、2019年は一か月あたり10万円を超える金融資産が純増、となっています。(あくまで平均値です)この2年が異常値なのか、今後この辺りに落ち着くかは今後を見ないとわからないですね。皆さん、使えるお金が増えても、あまり使わないのですね。ただそれはここ20年の日本経済の厳しさだったかもしれません。
 それでは増えた金融資産はどこへ向かっているのでしょうか?家計調査の結果では以下の通りです。

 大きな流れとしては保険に掛ける費用が大きく減っているようです。貯蓄型の保険を減らしているのでしょうか。そして有価証券の購入額は年ごとに大きく異なっています。そしてその割合は、とても低いですね。代わりに貯蓄に回しています。「貯蓄から投資へ」の掛け声はどこへやら。まあその分、貯蓄から金融資産へ資産が移動した場合に将来の伸びしろが日本市場に残されているのかもしれません。

消費者物価指数を考慮した収支動向

 ここまで家計調査による二人以上勤労者世帯の支出動向や貯蓄・投資動向を見てきましたが、どのような印象を持たれたでしょうか?最後に消費者物価指数を考慮した収支動向を確認したいと思います。お金の価値は一定ではありません。例えば消費税が上がれば、今あるお金で購入できるものが減りますよね。またインフレ、デフレによってもお金の価値が変わります。インフレならお金の価値が下がり、デフレなら上がります。日本は長くデフレを経験してきましたが、近年はインフレ傾向です。それは消費者物価指数からも見ることができます。

 2000年以降、上のグラフはデフレの影響で下落傾向でしたが、2013年から上昇傾向に転換しております。これはインフレもありますが、この間消費税が 5% 上がっていることも忘れてはいけません。2013年から2014年の急激な伸びは消費税が5%から8%に上がった影響でしょう。その後も緩やかな上昇を継続しています。まだ消費税が8%から10%に上がって間もないので、その影響は今後わかるかなと思います。いずれにせよ、消費者物価指数は2012年の底から2019年まで上昇傾向なのです。ただ消費者物価指数が上昇しても私たちの可処分所得も同様に増えていれば問題ありません。次に世帯当たりの収入が消費者物価指数を考慮した時のどのような変化をしているかを下の図に示しました。こちらも2015年を100としています。可処分所得については各年の所得を消費者物価指数で割り、2015年と比較することで示しています。

 見ていると少々悲しくなるグラフですが、消費者物価指数を考慮した後の可処分所得は2000年から2014、2015年付近まで下落トレンドです。その間、おおよそデフレでしたが、それを上回るスピードで可処分所得も下落していたようです。近年は可処分所得が増えていますが大きく伸びたのはわずかここ2年です。2020年はコロナの影響でおそらく下落するでしょう。そして大きく伸びてきている2019年の可処分所得でさえ、2000年には届いていないのです。

まとめ

 以上、今回は家計調査から私たちの支出行動や貯蓄・投資行動、また私たちの可処分所得がどのように推移してきたかを見てみました。世帯として可処分所得が伸び悩む中、私たちは支出を大きく見直してきているように思えます。時々日本人は以前より貧しくなっている、という論調を聞くことがありますが、こづかいや交際費が削減されてきている点や、消費者物価指数が近年伸びてきており、これらが貧しさを感じる要因の一つかもしれません。世帯における可処分所得の伸び悩みも要因の一つかもしれません。そのような厳しい環境下においてはやはり自分自身のスキルを磨いて、収入を増やす努力をすることが大切かなと感じました。方法は昇進、転職、投資、副業など様々あるかと思いますが、少しずつ勉強していきたいと思います。

 それでは、また。

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